東京高等裁判所 平成7年(行コ)130号 判決 1996年4月22日
控訴人(原告) ダイナベクター株式会社
被控訴人(被告) 東京法務局渋谷出張所登記官
訴訟代理人 東亜由美 高野博 ほか一名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一申立て
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対してなした原判決別紙物件目録記載の土地についての東京法務局渋谷出張所平成六年四月一四日受付第八八三七号所有権移転登記に課される登録免許税の額を六二三万〇一〇〇円とする認定処分のうち、二八七万四〇一〇円を超える部分を取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文第一項同旨
第二事案の概要及び証拠関係
一 本件事案の概要は、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
二 証拠関係<省略>
第三当裁判所の判断
一 当裁判所も控訴人の本件訴えは不適法なものと判断する。その理由は、以下のとおり付加訂正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決五枚目表六行目末尾の次の行を改めて、
「 控訴人は、法附則七条、法施行令附則三項に当該不動産に台帳価格があるときはこれを課税標準とすることが「できる」と定めてあることから、登記官の認定処分をまって初めて課税標準、税額が具体的に確定するものである旨主張する。しかしながら本件の前提となる租税特別措置法八四条の三においては「・・・政令で定める価額・・・とする」と一義的に定められており、右主張は前提を欠くものである。そもそも右規定は、前記のような登録免許税のいわゆる自動確定の性格を前提として、時価の認識が関係者によって多岐に分かれることを避けるため、認識の容易な台帳価格をもって課税標準としてもよい旨定めたものであり、もとより登記官の裁量を認めているものではなく、また登記官の行為によって初めて課税標準、税額が確定するとの趣旨のものではない。
なお控訴人は、租税特別措置法八四条の三、同法附則二四条九項につき、右規定自体又はその適用が日本国憲法八四条、一四条に違反する旨主張する。しかしながら、右規定は、固定資産課税台帳に登録された土地の価格が近時高額の傾向にあることから、具体的に評価された個々の不動産の右台帳価格に一定率を乗じた金額を課税標準とすることとして政策的見地から税負担の軽減措置を図ったものであって、右軽減率が一律であることが右措置を納税者間で著しく公平を欠き、また実質的平等に反するものになるとは到底解し難く、したがって右法条、その適用が日本国憲法八四条、一四条に違反するとの主張は採用しない。
また控訴人は、法二五条と法二六条との対比から、法二五条においても登記官の判断作用があるとする。しかしながら右は対外的な表白行為を伴わないものであり、かかる行為に当然に行政処分性を認めるのは困難であるのみならず、法二六条の通知も税額を確定させる課税処分ではなく、税額確定前に予め登記官の認定した課税標準、税額を知らせ、そして右税額を納付しなければ登記申請を却下することを警告する徴収上の行為と解されるものであるから、右のような法二六条との対比から当然に登記官の認定処分性を認めることもできないものである。」
を加える。
2 同枚目一〇、一一行目の「求めることができるのであって、」を「求め、また法三一条二項の請求によることも考慮し得るものであるから、」に改める。
3 同枚目裏四、五行目の「却下することとし、」から同五行目末尾までを「却下することとする。」に改める。
二 よって本件訴えを却下した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 丹宗朝子 市川頼明 北澤章功)